国連バク保護委員会から発表がありました。南の島で生まれ、生息地に移送された2世、3世バクたちに、移送直後から「下痢、嘔吐、食欲不振」などの消化器 症状がみられています。一部のバクは衰弱が激しく、約10%程が移送後1週間以内に死亡しているそうです。このような異変について一人の研究者の報告では ありません。複数の研究者が報告をしています。原因はいまだ解明されていません。しかし、見過ごすわけにはいきません。原因究明が待たれます。
それともう一つ。南の島で元気に育った子供たちのことです。「移住先から戻った子供たち」と言ってももう立派な若者なので、以後は若者たちという表現を使 わせてもらいます。その若者たちが、島から戻った直後から「下痢、嘔吐、食欲不振」といったバクと同じ症状を起こすことがあるそうです。多くは戻ってすぐ に発症し1ヵ月くらいで症状は自然消失するようですが、中には症状がいつまでも続く若者もいるそうです。死亡者がいるかどうかは現段階では分かりません。
国連バク保護委員会が調査に乗り出しています。
以上、街なか放送 トムが報告いたします。
すすけた空気の向こうに見える空。いつ終わるともなく続く喧噪。背中を丸めて行きかう大人たち。
夜のとばりが下りるころ、酒のまわった大人たちが、今夜も街にあふれている。
おととい会った女の話しで。男たちは盛りあがる。
昨日別れた「嘘つき」なやつ。それでも男を思って女が泣く。
「肩がぶつかったぞ」と怒鳴り合い、「お前が悪い」と罵り合う。取り巻く群からヤジが飛ぶ。グラスが割れ、悲鳴が上がる。
大の大人が大声で泣き、笑う。朝まで続くパーティーは、今夜もここでくり返えされる。
「明日晴れるといいですね」ろれつの回らぬ若者が尋ねると、うつろな目つきのおっさんは「そうだな」と答える。
「明日は雨です」と言いなおした若者に、「そうだな」とおっさんが答える。
「昨日こっちに出てきました」「へーそうなんだ」遠くで犬が吠えている
「今夜、どうするんですか」「さーねー」おっさんは手にしたビンを放り投げた。
「にいさんこそ今夜は?」「別にあてなどありません」
「ところで夢は…」と言って若者はおっさんの顔をのぞきこんだ。「さてね、とおの昔に捨てたかな」おっさんの顔は浅黒く光っていた。
若者はその場を後にした。
ネオンでできた影が、今夜もおっさんを包んでいる。